SEIBU RAILWAY 西武鉄道「Laview」

  • 前例のない案件。
    期待と不安が同時に走り出す。

    日立製作所様から西武鉄道様の新特急の外板デザイン開発についての相談をいただいたのは2016年のことでした。西武鉄道様が25年ぶりに特急車両を新造するにあたって、外板デザインにDNTの塗料の活用を提案してもらえないか、という内容でした。建築家の妹島氏監修のもとデザインにもこだわり抜いた新型特急。その要求レベルは非常に高く、挑戦できる喜びとともに、実現への不安も同時に抱いたことを覚えています。求められていたのは金属調の塗装(スーパーブライト)を活用した外板デザイン。当時、メッキ処理やフィルムラッピングに変わる金属調塗料として、自動車部品などの小さく湾曲したパーツに塗装を施す塗料として使用していましたが、車両外板のような大型かつ、平面なものへの塗装実績はありませんでした。前例のない案件。新たな挑戦。期待と不安が入り混じる中、受注に向けてプロジェクトが動き始めました。

  • 度重なる新たな課題。
    2年の試行錯誤の先に掴んだ信頼。

    金属調塗料独特の塗装ムラ。わずかな大きさでもゴミは目立ち、部分補修塗装ができない塗装であるがゆえ、小さなムラによる全面補修塗装(塗り直し)が発生します。そのため試験塗装を行う中で多くの課題にぶつかりました。その度に、以前からスーパーブライトを扱っている自動車プラスチック関係の部署へ相談に行き、塗料の持つ特徴や温湿度との関係などを調べ、資料化し、課題を一つずつクリアにしていきました。
    また、デザイナーの求める質感や色調を実現するため、カラーセンターと連携し何度も繰り返し調整を行い、イメージに沿う塗装へと仕上げていきました。
    正式に発注をいただけたのは、試行錯誤を始めて2年の月日が経った頃。営業を中心にお客様の要望をしっかりと把握し、チーム全体で取り組んだことで、信頼を勝ち取ることができた瞬間でした。西武鉄道様から車両塗装の案件を任せていただけたのも、これまで前例のないことでした。

  • 本当の挑戦の始まり。
    そして、手にした大きな自信。

    受注の喜びも束の間にプロジェクトが本格始動しましたが、実際の製造工程を確認すると、どうしても塗装期間と梅雨の時期が重なってしまうことが発覚しました。スーパーブライトは湿度の影響を受けやすく、受注前のテスト環境とは異なる環境での塗装を余儀なくされたのです。この事態によって社内では再び大きな不安に襲われ、本当の挑戦はこれからなんだ。と改めて気付かされたのです。そこから、日立製作所様の塗装チームとの連携作業も始まり、プロジェクトを成功に導くため塗装方法や施工について話し合い、ブラッシング(白化(ボケたような)塗装不具合)防止を施し、万全の準備で本番に挑みました。全ての塗装が完了した時には、プロジェクトメンバー全員が安堵の表情を浮かべていました。
    後日、車両発表前の試乗会に呼んでいただき、「Laview」を見た時、「これはすごいものができ上がったぞ」と心が踊ったことを今でもよく覚えています。塗装時の現場では外板のみで内装や電飾は施されていなかったため、その全貌を見たのは試乗会の時が初めてでした。日立製作所様の塗装技術の助けもあり、ムラもなく綺麗に仕上がった車両を見て、「私たちはスーパーブライトで大型の塗装を完成させたんだ。」と大きな自信へとつながりました。

  • プロジェクトが教えてくれたのは
    挑戦すること、協力することで生まれる可能性の大きさ。

    この「Laview」への塗装は塗料業界へも大きなインパクトを与えました。西武鉄道様にとっても大きな挑戦となったこの車両は大きな注目を集め、車両に対して金属調の塗装が可能であること、そしてこの技術をDNTが保有していることが世間に知れ渡る最高の機会になりました。以降、様々な業界からこれまでになかったような案件を相談いただくようになり、それら一つひとつの案件に日々チャレンジしています。新たな技術が実績として完成したことはもちろん大きな収穫になりましたが、このプロジェクトが教えてくれた一番大きなことは、挑戦することの大切さだと思います。一見、不可能かと思われた依頼内容でしたが、多くの部署が手と手を取り合い、力をあわせることで実現できる。身を持ってそう思えたことが会社にとっても、私たち個人個人にとっても大きな成長になったと思います。