ROLLER METALLIC ローラー塗装可能なメタリック塗料

  • 常識を捨て、
    課題に先回りできるか。

    メタリック塗装とは乗用車や家電製品に使用される金属光沢を与える塗装方法です。着色顔料と金属粉(アルミなど)を混ぜた塗料で、塗りムラを最小限に抑えるため、スプレーで丁寧に吹き付ける方法が業界では常識となっています。
    高層ビルなどの建築物は、取り外しが可能なカーテンウォールと呼ばれる外壁を利用することが多く、工場でメタリック塗装された外壁を一枚一枚貼り付けていくことで建物が完成します。塗替えの際には、高所でのスプレー塗装は飛散リスクを伴うため、外壁一枚一枚を剥がし、工場へと運搬。再度メタリック塗装を施し、貼り付け作業が行われています。しかし、この施工方法は時間とコストがかかり過ぎてしまうため、多少の老朽化では塗り替えのできない現状がありました。そこで、外壁を外さずに現地でそのまま塗り替えが行えるローラー塗装に目をつけ、ローラー塗装が可能なメタリック塗料のニーズに先回りすべく、開発に着手したのです。

  • 未知の領域。
    立ちはだかった既成概念という壁。

    この開発テーマを発表した際には、メタリック塗料に関わる方々に「そんなことできるわけがない。」と言われたことをすごく覚えています。実際にスプレー塗装ですら、ムラを抑えることが難しい塗料。だからこそ、開発できた時のインパクトは計り知れない。そう思って取り組み始めました。最初の、かつ最大の壁は技術探索でした。これまでに誰も考えもしなかった塗料の開発。どのように設計すれば実現できるのか、その部分すら未知の領域だったのです。各部署の有識者より様々なアイデアをもらいながら、調査・検討を繰り返しましたが、何度繰り返してもメタリック感が実現できず、頭を抱えた時期がありました。探索を繰り返す中で、メタリック塗料の配合内に存在する一部の原料が全体へ大きく影響を及ぼし、邪魔になっていたことが原因であると判明しました。全ての既成概念を取り払い、一から配合を見直すことで気付くことができたのです。
    塗料の設計が完了したのは1年後でした。そこから実際の塗料に落とし込んでいくために、様々な塗装条件に合わせて気温や環境への適性を図り製品が完成したのは、設計を始めてから2年後のことでした。

  • 他部署との協力から生まれた新製品。
    市場での確信。

    今回の製品開発は、他部署のバックアップにも大いに支えられました。原料の混ぜ方から施工塗装や機械測定などの確認、その後の試作まで付き添っていただきました。
    最もこだわったのはメタリック感です。その上で、メタリック感にこだわりすぎることで他の性能を落としてしまわないよう、バランスの良い製品に仕上げることにも注力しました。ローラーでも塗りやすく、長持ちする製品であることはもちろん、環境にも配慮した製品であることを心がけ、完成まで何度も試行錯誤を行いました。
    開発当初は物件への採用が決まっていたわけではなかったので、実感はあまり湧かなかったのですが、確実にニーズに応える製品であることは確信していたので、今後の実用性にワクワクしたことを覚えています。

  • 報われた思い。
    プロジェクトを通しての成長。

    この塗料が実際に採用された物件としては神戸国際交流会館があり、塗替え工事に使用していただきました。着工時には、無事に綺麗に塗装されるかどうかという不安もあり、塗装が完了した時に初めて安堵とともに喜びが湧き上がってきました。国際都市である神戸を代表する建物の塗り替えは大きな話題になりました。後日、神戸国際交流会館の担当者様が「満足している」とおっしゃっていたという話を聞き、長期に渡った研究開発が報われた思いでした。その後、様々なお問い合わせをいただいたこの製品は、カラー展開にも成功し、今も多くのお客様に喜んでいただいています。
    このプロジェクトを通し、既成概念を取り払うことの重要さ、そしてどんなことでもやればできるということを証明できたとともに、メタリック塗料に関する構造や現象はほとんどが説明できるようなノウハウを蓄積することができました。何よりも、DNTが世の中に大きく貢献することができたことが大きな自信です。