鋼道路橋防食便覧C-5塗装系とLCC低減への提案(厚膜形ふっ素樹脂塗料)

現在日本では、高度経済成長期以降に整備された社会インフラの老朽化が進んでおり、これらの長寿命化に向けたメンテナンスの時代が到来している。これら社会インフラの耐力を維持するために“防食“が担う役割は、今後益々増大する。近年、橋梁・プラント等の大型鋼構造物の維持管理においては、LCC(ライフサイクルコスト)の低減が求められている。塗装に関しては、高耐久性材料の適用による塗替え周期の延長や、省工程形塗料・厚膜形塗料の適用による工程短縮といった取り組みがなされている。鋼橋の代表的な新設塗装仕様である鋼道路橋防食便覧のC-5塗装系の紹介とともに、LCC低減の提案材料として厚膜形ふっ素樹脂塗料を紹介する。

1.鋼道路橋防食便覧 C-5塗装系

ふっ素樹脂塗料上塗の採用は1980年代後半より始まったが、現在における重防食塗装の指針は2005年に公益社団法人日本道路協会より発刊された鋼道路橋塗装・防食便覧に基づく。当時、鋼道路橋塗装・防食便覧では、新たに建設される道路橋はC-5塗装系を適用することが望ましいとされた。
C-5塗装系は、エポキシ樹脂塗料下塗を1回で120μm塗装することで塗装の省工程化を、また、上塗り塗料をふっ素樹脂塗料とすることで塗替え周期の延長を図っている。しかし、C-5塗装系が示された当時は、まだ厚膜形ふっ素樹脂塗料が開発されていなかったため、下塗りの省工程化のみにとどまるものであった。
鋼道路橋塗装・防食便覧は、2014年に鋼道路橋防食便覧として改訂されているが、C-5塗装系に関わる改訂はなく、現在も鋼橋の代表的な新設塗装仕様として認知されている。

2.LCC(ライフサイクルコスト)の低減

LCCとは、建設から供用を終えるまでの総費用(初期投資費+維持管理費+解体撤去費)を意味する言葉である。近年、これを算出し、最も経済的な手段を講じることが望まれており、製作される重要大型構造物は計画的な維持管理を義務付けている場合もある。
塗装によるLCC低減の手法としては、以下の4つの手法が挙げられる。

(1)高耐久性材料の適用

耐久性の高い材料を適用することで、塗替え周期の延長が可能になり、維持管理費の削減が可能になる。
高耐久性材料としては、防食性に優れたジンクリッチペイントや耐候性に優れたふっ素樹脂塗料などが挙げられる。

図1に、駿河湾海上暴露における各種上塗り塗料の耐候性試験結果を示す。光沢保持率の変化より、ふっ素樹脂塗料がポリウレタン樹脂塗料やフタル酸樹脂塗料と比べて優れた耐候性を示すことがわかる。

図1 駿河湾海上暴露試験結果(色相:グリーン)

(2)省工程形塗料の適用

近年の塗料および塗装技術の進歩により、一層あたりの塗膜厚を大きくすることが可能となったことで、塗装回数を削減する省工程システムが確立され、従来2回で塗装していた膜厚を1回で塗装可能な厚膜形塗料が開発されている。これらの塗料は一度に多くの膜厚をつけるため、有効成分量も多く、結果としてVOC排出量が少なくなるため環境負荷低減にも一役かっているものが多い。

(3)施工上の工夫

鋼橋においては、その構造上、以下のような部位が比較的早期に発錆する弱点部として認識されている。

  • ボルト接合部やフランジのエッジなどの隅角部
  • 腐食促進物質である塩化物イオンなどが堆積しやすく、雨がかりがし難く、容易に洗い流されないような下フランジ下面
  • 水分影響を長期間受ける支承部周辺

このような弱点部に対する施工上の工夫例を以下に示す。

  • 膜厚の付きにくいエッジ部に対するR加工や増し塗り
  • 結露水が堆積しないような橋梁内面の構造設計
  • 高湿度環境にならないような橋梁内面の空調管理

こうした施工上の工夫により、塗替え周期の長期化が可能になる。

(4)塗膜診断による適正な塗替え周期の把握

鋼構造物の防食状態を正しく把握し、塗替え時期を適正化するためには塗膜診断が有用である。従来、塗膜診断は、外観観察・付着性試験・色調・光沢の記録などを行うことで判断されてきた。近年では、塗膜下の鋼材の状態を非破壊で確認できるカレントインタラプタ法(ISO 13129)を用いた塗膜診断も提唱され、見た目とともに鋼材の健全度を数値化評価することで構造物の防食状態の健全性を担保する技術も活用され始めている。適正な塗替え時期を判断し、最も経済的な塗り替え時期に、環境に合った補修を行うことで、LCCを低減することが可能となる。

3.厚膜形ふっ素樹脂塗料

耐候性に優れたふっ素樹脂塗料を厚膜で塗装することにより、防食下地をより長期間にわたって健全な状態で維持できると考えられ、こうした考えに基づいて、厚膜形ふっ素樹脂塗料が開発されている。
厚膜形ふっ素樹脂塗料の乾燥膜厚は55μmであるため、従来の重防食塗装における中塗塗装(30μm)、上塗塗装(25μm)という2回の工程を1回に短縮することができる。用途としては、橋梁、プラント等鋼構造物の中塗り・上塗り兼用塗料として用いられる。主に新設塗装時には強溶剤形の厚膜形ふっ素樹脂塗料が、塗替え塗装時には弱溶剤形の厚膜形ふっ素樹脂塗料が適用される。塗装工程の短縮を特長とする塗料であることから、下塗塗料には厚膜形のエポキシ樹脂塗料が適用される場合が多い。

図2に、厚膜形ふっ素樹脂塗料の促進耐候性試験における光沢保持率の変化を示す。試験はサンシャインウェザーメーターにより実施し、従来のふっ素樹脂塗料と同等の耐候性を有することが確認されている。

図2 厚膜形ふっ素樹脂塗料の促進耐候性試験結果(光沢保持率の変化)

表1に、新設時における従来のふっ素樹脂塗装系(C-5塗装系)と厚膜形ふっ素樹脂塗料を適用した塗装系を示す。

表1 従来のふっ素樹脂塗装系(C-5塗装系)と厚膜形ふっ素樹脂塗料を適用した塗装系(新設時、スプレー塗装)

従来のふっ素樹脂塗装系 厚膜形ふっ素樹脂塗料を適用した塗装系
塗料名 標準膜厚
(μm)
標準使用量
(g/m2
塗料名 標準膜厚
(μm)
標準使用量
(g/m2
工程 素地調整 ブラスト処理ISO Sa2 1/2 - - ブラスト処理ISO Sa2 1/2 - -
防食下地 無機ジンクリッチペイント 75 600 無機ジンクリッチペイント 75 600
ミストコート エポキシ樹脂塗料下塗 - 160 エポキシ樹脂塗料下塗 - 160
下塗り エポキシ樹脂塗料下塗 120 540 エポキシ樹脂塗料下塗 120 540
中塗り ふっ素樹脂塗料用中塗 30 170 厚膜形ふっ素樹脂塗料 55 260
上塗り ふっ素樹脂塗料上塗 25 140
合計 - 250 1610 - 250 1560
塗装工程数 5工程 4工程

関連資料

運営:(一社)日本建材・住宅設備産業協会

  • 注目製品特集
  • 塗料の種類
  • DNT物件実績情報