新技術/新商品情報 大日本塗料株式会社

DNTコーティング技報No.3(P13)にも関連記事を載せています。

 射出成型機は電動化が進み非常に高精度な制御が可能になり、油圧機と比較してその能力は数段向上し、さまざまな特殊成形が可能となりつつある。 プラスチック成形品の最大の弱点ともいえる貧弱な表面性を改良する成形加工技術の開発を進めている。
 一方、これからの技術には環境負荷を極力小さくすることが要求されている。この点、油圧機と比べ省エネルギー効果が大きい電動成形機の高精度な 制御機能を有効に利用することにより、これまで熱硬化性樹脂でのみ実用化されていた金型内塗装(IMC)技術を、熱可塑性樹脂へ適用できるようになった。なお、 この技術は「IMPREST(インプレスト)成形法」と命名し、宇部興産機械および大日本塗料鰍謔阡フ売している。


1. 金 型 内 塗 装 技 術

 従来の塗装は、スプレーあるいはディッピングといった方法により、揮発性有機溶剤を含んだ塗料を成形品表面に付け、揮発性溶剤を蒸発させることにより行っていた。 金型内塗装技術は大きく二つに分類される。その一つは金型内にあらかじめ塗料を塗布しておき、その金型で樹脂を成形する方法で「プリモールドコート法」と呼ばれている。 もう一方は樹脂成形を行った後で金型内に塗料を注入し、成形品表面を塗装する方法で「注入法」と呼ばれている。
 さらに注入法は樹脂成形を行った金型内に高圧で塗料を注入する方法(高圧法)と、樹脂成形完了後金型を僅かに開き低圧で塗料を注入し、その後再度金型を閉じて成形品表面を 塗料で閉じて被覆し、そのまま塗料を硬化させる方法(低圧法;図1)に分類される。注入法で使用される塗料は熱硬化型の塗料であり、従来型のスプレーやディッピングで使用 される塗料のように揮発性有機溶剤を含んでいない。インプレスト成形法は、低圧注入法に分類される。
 ところで金型内塗装技術は、これまで熱硬化性樹脂へのプライマー塗装として発達してきた。この原因は、この工法では金型の転写性が非常に優れていることによる。 すなわち、熱硬化性樹脂のシートモールディングコンパウンド(SMC)のプレス成形においてはボイドの発生が割け難く、このボイドを隠蔽するのに最適な方法として 利用されてきた。同時に、成形サイクルの長いSMCの成形においては、塗料の硬化時間が成形時間に含まれることにより、サイクルの延長につながらなかったことも 技術の発展の一要因であった。

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注入された塗料が製品外に漏れ、連続した成形ができなかった。
A
塗膜の厚みの均一化および膜厚を制御できる成形機がなかった。
B
熱可塑性樹脂の成形温度(金型温度)および成形サイクルに見合う硬化特性をもった塗料がなかった。
 これらの要因を解決することにより、熱可塑性樹脂への金型内塗装技術が実用化可能なレベルまで到達し、 IPF2002において世界で初めて一般公開することが可能となった。

2. 成 形 装 置

 インプレスト成形は従来とは異なる塗装方法であるため、その装置もまた従来とは異なる。図2に塗料注入のための注入機と金型の概略を示す。 液体状の塗料を注入するために金型にインジェクタと呼ばれる塗料注入口の開閉装置を取り付けている。このインジェクタは計量シリンダと 塗料タンクに接続されており、通常タンク中に投入された塗料は計量シリンダで計量された後、計量シリンダの前進動作でインジェクタを経由して タンク内へ戻るように循環している。これは高温に保持された金型に取り付けられたインジェクタ内で、塗料が硬化することがないようにするためである。 塗料注入時にはインジェクタが開き、計量シリンダで計量された塗料が金型内へ注入される。
 成形機に要求される機能の一つが型開閉動作の応答性および再現性である。塗料は金型を開いて注入されるため、注入時の型開量のバラツキは注入圧力のバラツキと なり、結果的に塗料注入量のバラツキとなる。注入量のバラツキは塗膜の厚みのバラツキとなるため、型開量の再現性は非常に重要な成形因子となる。同様に塗料注入 後は速やかに金型を閉じる必要がある。
 すなわち、熱硬化性塗料の硬化反応の進行による流動性が消失する以前に型閉が完了しないと、成形品の全面を塗装することが不可能となったり、塗膜表面に流れ模様が 現れたりする原因となる。このようなインプレスト成形特有の型締制御に対する要求品質を満足させているのが、トグル機構を採用した電動成形機である。 トグル式型締機構では梃の原理を応用しているため、作用点と力点の関係でクロスヘッドの移動量に対し、プラテンの移動量がおおよそ1/10(850d電動成形機の場合) である。この結果、プラテンの位置制御能力はクロスヘッドの位置に対し、10倍の能力をもつことになる。しかもクロスヘッドの位置を制御することにより、型開状態から 型締状態への移行も速やかに行うことが可能である。
 この成形に使用される金型には、塗料を製品部外に漏らさない構造が要求される。塗料が漏れると次成形開始前に金型を清掃する必要があるため、連続成形が不可能となる。 この課題をクリアするために食い切り構造を採用している。さらに食い切り部に薄肉のシール部を設け、樹脂の冷却による固化収縮が起こってもシール部から塗料漏れが 起こらないようにしている。

3. インプレスト成形用塗料および塗膜性能

 この工法に使用される塗料はプラグラスと名付けられており、主成分はアクリルウレタン系の熱硬化塗料で、金型温度で分解してラジカルを発生する硬化剤の作用により、架橋反応 を起こして硬化する。着色は一部の架橋反応を阻害する着色剤を除いてほとんどの顔料が使用可能で、塗膜の色も調整可能である。ただし、アルミニウムやマイカ等の光輝顔料を 含んだ塗料では光輝顔料の配向むらが発生し、対策を講じる必要がある。塗料は自動車外板に要求される耐候性等のすべての要求性能を満足する。特に耐溶剤性に優れ、ガソリンや アセトンのような溶剤に対しても影響を受けない。

4. インプレスト成形の特徴

 インプレスト成形においては、従来とまたく異なる工法により塗膜を形成させている。このため、その塗膜にはいくつかの特徴をもっている。 代表的な特徴について解説する。

4-1. サブミクロンの転写性

 インプレスト成形では、液体状態の塗料を金型内に注入して数MPaの圧力を保持して金型に押し付けた状態で硬化させるため、 樹脂成形と異なり金型の転写性には非常に優れている。肉眼では鏡面にみえる金型表面であってもSEMで観察すると磨き傷が残って おり、樹脂成形では転写できないサブミクロンの磨き傷もインプレスト成形では転写していることが分かる。また金型内にシボを 付けた場合、塗装成形品でありながらその表面にシボをもった成形品を得ることが可能である。このことを利用すれば、塗装表面に ロゴを付けて意匠性を持たせることが可能となる。もちろん金型が鏡面であれば鏡面の成形品が得られることはいうまでもない。 このため、基材樹脂中にガラス繊維を含んだ成形品へインプレスト成形を施した場合であっても、ガラス繊維を含まない樹脂成形品 への吹き付け塗装程度の表面性をもっている。このことは、従来寸法安定性の必要な成形品においてガラス充填樹脂を使用したいが、 塗膜の表面性が問題となって実用化されなかった成形品等には非常に有効な手段となる。さらにひけやウェルド、フローマーク等の 樹脂成形を行うことにより隠蔽することが可能である。樹脂のひけやフローマーク等の不良はクリア塗装であっても隠蔽可能である。

4-2. ミリ単位の厚膜成形

 インプレスト成形において注入された塗料は、すべて塗膜として成形品表面に付着する。このため厚膜成形には非常に好都合である。 スプレー塗装で厚い塗膜を得るには吹き付け→乾燥工程を繰り返すことが必要で非常に煩雑な作業となるが、インプレスト成形においては 通常の成形サイクル内で成形可能である。しかもスプレー塗装のように塗装中に塗膜がタレを起こしたり、雰囲気中のゴミが付着して 不良品となったりすることがない。このような特徴ある塗膜と張り合せ成形や多層成形あるいは付着材等を組み合わせることにより、 さらに意匠性を高めることも可能である。

4-3. 環境に優しい塗装技術

 インプレスト成形のさらなる特徴は、環境負荷が小さいことである。熱硬化反応により塗膜を形成するインプレスト用塗料は、 成形中も塗膜形成後も揮発性有機化合物(VOC)を系外に発散することがない。このため環境対策のための大掛かりな設備も当然 不要となる。インプレスト成形では塗料はすべて塗膜として製品に付着するため、廃棄物の発生も抑制できる。
 また、この工法を利用すると、原料としてインプレスト成形品の塗膜付廃材を含んだ樹脂を粉砕後再使用しても成形品表面にはまったく 影響がなく、バージン材を使用した場合と同様の表面平滑性が得られる。このため塗膜を加水分解したりするような特別の処理なしに リサイクル使用できる。

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